薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
面白かった。
洋の東西を問わずに宮廷モノが嫌いな僕でも、楽しめた。
好きじゃない人間でも楽しめるんだから、この手のジャンルが好きな人はたまんない逸品だろうなあ。
宮廷モノって、知らない単語や興味のない文化ばかり出てきて読みにくいという先入観があったけど、杞憂だった。
一部、性的なことでぼかした表現になっているのは仕方ないとしても、独特な文化を前提にして説明不足になることもなく、わかりやすく書いてあった。
主人公が周囲に能力を隠していて、本心を隠して他人に心を開くことなく、また、内心で他人を馬鹿にしているともとれる、ちょっといけすかないやつだけど、女子ということもあって、愛嬌とも言える。
適度に痛い目に遭っているし、遥か上の権力者には逆らえないという構図もあり、主人公の生意気さが嫌みになっていないのもいい。
ひとつひとつのエピソードが面白くかいてあるから、短編集の弱点である「一冊として見たときの盛り上がの欠如」はほとんど感じなかった。
「 男児を産んだけど失った妃」が一番好きだった。
なんというか、ああいう立ち位置の不幸な女性って好きなのよね。
そこが話の焦点ではないとは分かっていても、あの人に幸運が訪れるかどうか期待しながら読んでいた。
主人公の貢献者ポジションに着く妃様はちょっと苦手。