グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む (電撃文庫)

 

 

「昨今の冒頭の一発ネタだけで最後まで書く」ような、似たような読み応えばかりの作品とは異なる。
物語や設定をじっくり楽しみたい人向けの作品。


『全ページほぼ図書館の中』という時点で、本作の世界が特異であることが分かる。
特異な世界で、個性あるキャラクターが何をなしていくのか、興味深く読むことができた。
図書館とダンジョン探索RPGという相性のよい素材を上手に調理していた。


様々な本の能力を引きだすというのも、わくわくできる。
これ、ゲームにしたら面白いやつ。


ヒロインは何人か出てくるけど、青色のパンツを穿いている子が一番可愛かった。
ポジション的に不遇扱いされそうなのが不憫。


読み終えてみれば「挑戦した作品」だなあという印象が強い。

というのも「終盤や続刊で盛り上げること前提」にして、序盤をやや犠牲にしている。

登場人物の多さが「終盤や続刊で意味が出てくる」という認識を、作者と編集者で共有できたのは素晴らしいことだし、それを実行した挑戦魂が凄い。
はっきり言ってしまえば、序盤から「同年代の学生」というイメージで統一されたキャラクターが大量に出てくるので、覚えづらい。
誰が重要キャラなのかも分からない。重要そうに出てくる幼馴染みは、挿し絵にはなっても、表紙には載っていない。逆に単なるモブっぽい者が主人公の仲間になって、活躍する。
そのため、「小説を読むときの、キャラ名を覚える脳内一時メモリ」をどのキャラに割けばいいのか分からずに、序盤で戸惑うこがもあった。

筆者や編集者も分かった上で作っているはずなので、相当、続刊も含めてのシリーズに自信があることが窺える。


実際、登場人物は「能力の性質上、一系統(一定の法則がある)しか使えない」ため「仲間との組み合わせで戦う必要がある」ので、登場人物の多さは後々に生きてくる。

 

本(能力)の設定は増えれば増えるほど面白くなるし、探索と言うこともあり、続けば続くほど面白くなる作品です。
 

 

◆朗読動画

朗読動画があるので、先ずはお試しで見てみましょう。


www.youtube.com

 

 

◆その他

序盤の登場人物の数やイメージコントールは同作者の『昔勇者で今は骨』が実に上手い。
小説の冒頭で、ここまで鮮やかに「過去の出来事」を書いた作品は、そうそうない。
『昔勇者で今は骨』は作品の性質上「冒頭に出てくる主人公以外の登場人物は、一巻では重要ではない」ことが明らか。さらに、職業が異なるから、名前を覚えられなくても絵面をイメージしやすい。