千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)
人気投票企画『https://lightnovel.jp/best/2021_01-06/vote.html』で3番目に票数を得ていた作品。
読んでいて非常に感情を揺さぶられたので、間違いなく名作。
ただ、好きか嫌いかだと、非常に難しい。
なんか10ページごとに、好きと嫌いが、100点と-100点が、繰り返し出てくる。
少なくとも序盤は、読むのをやめようかと思うほど、不愉快だった。
というのも、リア充視点で、陰キャをディスりまくるので、自分が陰キャなので説教されているみたいで不愉快。
まったく共感出来ないむかつく主人公の一人称が延々と続き、もう、過去にこれほどないんじゃないかというくらい心を揺さぶられた。
つまり、筆者の掌の上……。
主人公がひたすら不愉快だったのに徐々に「あれ、いいやつ?」と印象が変わっていく。
それこそまさに、本作に出てくる引きこもり陰キャが主人公を心を開いていくように、僕も読んでいて主人公のことを好きになっていく。
小説としては、設定や構想が非常に興味深い。
序盤から登場人物が多く、さらに全員特徴を現わすと「陽キャの学生」で「主人公のことが好き」になる。
つまり、プロットレベルだと同じキャラが5人くらい出てくる。こんなにキャラは要らないと思う反面、「仲間が大勢いる陽キャ」を描写するためには、大勢出すしかないとも思う。
これは、正解が分からない。
主人公グループの「名前ありキャラ」を「名なしのモブ」にしたら、どんな作品になるのだろうか。
作中で「相手を理解しようともせずに、レッテルを貼る陰キャになるな」と主張しているんだけど、
作品の内容(主に主人公の気取った発言)が「相手を理解しようともせずに、レッテルを貼る陰キャ」のような読者を育てそうなことも興味深い。
本当に色々と考えさせる作品だったので、間違いなく良作。
救われたことがある陰キャや、救いがあると信じられる陰キャは楽しめる作品だと思う。
ただ、「本当に酷い目に遭ったことがある人」が楽しめないのは確かだと思う。