ようこそ実力至上主義の教室へ (MF文庫J)

 

 

 

「やたらと学生生活が優遇される架空の学園」が舞台になる系の作品。
こういう舞台はMFに多い気がする。

 

主人公が苦手なタイプなので序盤の印象はあまり良くない。
読み始めた直後は「意味もなく一人称が中二病全開で読みづらい作品か」とげんなりした。

この手のキャラクターって「そんな喋り方をする人間が現実にいたら嫌われるだろ」としか思えない。
さらに友人やヒロインまで似たような口調で斜に構えた態度をとる作品が、本当に苦手で……。


ただ、本作は違った。


「こんな性格じゃ友達いねえだろ」と感じたように、友達がいない。
それでいて、適度に友達をほしがる。でも、うまくいかない。

ウザい性格に理由付けがされていて、物語の中での必然性を出しているから、読んでいるうちにだんだんと好きになっていく。


メインヒロインも性格に難がありで、「こんな性格じゃ友達いねえだろ」みたいなタイプなんだけど、ちゃんと友達が居ない。

よくある「何故か良き理解者に囲まれている」作品とは違って、ちゃんと、キャラクターの性格と立ち位置が一致していた。


『千歳くんはラムネ瓶のなか』も同じように、主人公が最初はウザくて(個性が描写されて)読み進めていくうちに好きになる(共感出来るようになる)。

この共通点は、主人公を書くうえでのヒントになるかもしれない。覚えておきたい。

 

ちゃんと終盤に向かって事件が起きて、主人公が仲間の協力を得て解決していくプロセスもしっかりと描かれていて盛り上がる。


物理的な障害ではなく、「性格に纏わるような人間関係」が根底にある問題なので、解決が実に困難に思える。


わりと詰んでいるような困難な状況を、どうやって、解決するのか興味を持ちながら読んだ。

 

物語では物理的な障害よりも精神的な(人間関係の)障害を与えるべきということと、
登場人物の性格(人格形成)には理由があるというのを、改めて教えてもらった気がする。
自分で書くときに忘れないようにしたい。