午後九時、ベランダ越しの女神先輩は僕だけのもの (電撃文庫)
エッッッッッ!
全年齢向けの健全なラブコメなのに、まるで全編セッ*ス……。
いや、セッ*ス後のピロートークみたいな甘さがあった。
タイトルにあるように、主人公とヒロインがベランダ越しにイチャイチャするお話。
家が隣同士で距離が近いというおいしいシチュエーションで、ふたりは恋人同士じゃないんだけど、もう付きあっているかのような仲良しイベントを毎日繰り返す。
チョコレートを食べさせるシーンなんて、もう指*ェラでは……。
健全ラブコメなのに「なんか、次のページではもう主人公が魅了されきって暴走して、セッ*スしていても不思議はない」くらい、先輩ヒロインが魅力的だった。
ちょっとサディスティック気のある先輩ヒロインが主人公をからかってくるのが実に心地よい。
終盤でふたりの関係に危機が訪れるし、その時の主人公の行動は共感出来るし、読後感が良い。
従姉妹ヒロインは臭い(臭いとは言っていない)し、クラスメイトヒロインはヤベえやつ。
最強の正ヒロインがいるからこそ、こんなサブヒロイン達を用意できたんだろうなあ。
このキャラクター造形のテクニック、学びたい。
ライトノベル人気投票 第22回 好きラノ2021年 上期
ネット上の投票企画。
特定のレーベルのベテラン作家の作品ばかり読んでいるせいで、偏った投票内容になってしまったことには、ちょっと反省。
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ダークエルフの森となれ(2) ―現代転生戦争― 水瀬葉月 【21上ラノベ投票/9784049135787】
[感想リンク] ダークエルフの森となれ -現代転生戦争- (電撃文庫) - うにっき
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ちっちゃくてかわいい先輩が大好きなので一日三回照れさせたい(3) 五十嵐雄策 【21上ラノベ投票/9784049137330】
[感想リンク] ちっちゃくてかわいい先輩が大好きなので一日三回照れさせたい (電撃文庫) - うにっき
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グリモアレファレンス(2) 貸出延滞はほどほどに 佐伯庸介 【21上ラノベ投票/9784049137293】
[感想リンク] グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む (電撃文庫) - うにっき
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ドラキュラやきん!(2) 和ヶ原聡司 【21上ラノベ投票/9784049135428】
[感想リンク] ドラキュラやきん! (電撃文庫) - うにっき
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午後九時、ベランダ越しの女神先輩は僕だけのもの(2) 岩田洋季 【21上ラノベ投票/9784049137828】
[感想リンク] 午後九時、ベランダ越しの女神先輩は僕だけのもの (電撃文庫) - うにっき
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浮遊世界のエアロノーツ 飛空船乗りと風使いの少女 森日向 【21上ラノベ投票/9784049138283】
[感想リンク] 浮遊世界のエアロノーツ 飛空船乗りと風使いの少女 (電撃文庫) - うにっき
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友達のお姉さんと陰キャが恋をするとどうなるのか? おかゆまさき 【21上ラノベ投票/9784086314176】
[感想リンク] 友達のお姉さんと陰キャが恋をするとどうなるのか? (ダッシュエックス文庫) - うにっき
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* 電子書籍オンリーの作品は投票対象外らしい *
川上稔 短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り(2)
[感想リンク] 川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り(1) (電撃文庫) - うにっき
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これからはWEB発の新人作品を読んでみたい。
特に、20台前半の若い人が書いた作品を読みでみたい。
オススメがあったら教えてください。
ちっちゃくてかわいい先輩が大好きなので一日三回照れさせたい (電撃文庫)
タイトルそのままの作品で、まさに、ラブコメ。ラブラブしてコメコメしてる。
主人公目線で話は進み、とにかく先輩ヒロインを照れさせようとする。
物語の構造は漫画の『それでも歩は寄せてくる』に近い。
同じ部活に所属する主人公とヒロインの関係が中心で話が進んでいく。
好意を隠さない後輩男子が、すぐに感情を表に出してしまう先輩ヒロインに、直球の言葉を投げまくる。
『ちっちゃく』てかわいい先輩の、小ささは物理的なサイズだけでなく、内面も現わしている。
親に「カレーライスのニンジンをニャンコ型にする」よう頼むような幼さがあって可愛らしい。
真っ直ぐな後輩が先輩に迫って、先輩が照れるという構造は、それこそ序盤の内は『それでも歩は寄せてくる』を彷彿とさせるが、中盤から徐々に本作ならではの要素が増え始めていき、面白くなっていく。
中盤から過去にまつわるちょっとしたトラブルが再燃しそうな雰囲気もあり、物語がだれないように興味を惹いてくる。
小エピソード集といった構成だけど、全編を通してきっちりと危機を迎えて、主人公が仲間の協力を得て解決していくので、一冊分の読み応えもしっかりあり楽しめました。
「傍から見ればいちゃいちゃラブラブなんだけど付きあっていない先輩後輩」の、照れくさい関係を見たい人にオススメの一冊でした。
作品自体に不満はないけど、ちょっとした問題が。
電子書籍版(KindleOasis)の不具合だと思うけど、ページの途中で小さい挿し絵(暗がりで抱きつくシーン)が差しこまれている。
おそらく、改ページ設定がない。
川上稔 短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り(1) (電撃文庫)
なんだろう。不思議な作品だった。
ラブコメのふりをしている『何か』だった。
収録エピソードの5作中4作が女性の一人称で描写されるのだけど、明らかに筆者は「女性のつもりでは書いていない」し、最初からそうする気がないように思える。
どのヒロインも、風呂上がりにパンツいっちょうでビールをのびながらレトロゲー(最新のハードで出てくるリメイクではなく、ハードもソフトも当時の物を使用する)を遊んでいそう。
というのも、一人称で「女子はそんなこと言わない」どころか「女子が知らなさそうなこと」がポンポン出てくる。
女性一人称のラブコメを読む感覚というより、
「美少女のがわだけかぶったVtuber」を見ている感覚に近いかもしれない。
読者はヒロインを好きになるのではなく、「ヒロイン」の行動を見て笑う楽しみをすることになる。
ヒロインは全員「なんでそうなる」というおかしな思考回路を持っているので、愉快。
収録してある話はどれも味が違って秀逸で、一番楽しめたのは四話だけど、もっとも印象に残ったのは第一話。
読み終えた後、そのままもう一回読んだ。
これは、そのまま『ライトノベルの教科書』の例文として載せられるほどに、ラノベとして完成度が高い。
というのも、いわゆる『小説の書き方』で紹介しているようなテクニックの実例、というか、解答がのっている。
舞台は高校で、恋愛を取り扱い、ライトノベルの読者層に共感を得られる普遍のテーマを持っている。
さらに、『他人の心を知りたい』という、誰もが一度は思うであろう、これまた普遍の題材を扱っている。
「女の子目線のちょっとエッチな要素」というのは、男子なら誰もが興味を持つこと。『おんなのこのからだ』みたいな本を図書館でこっそりと借りたくなる少年心をくすぐってくる。
『能力を得て始まる物語は、その能力を失って終わる』べきなんだけど、本作はしっかりと『教科書に書いてある***すべきとは、こういうことですよ』と回答を見せてくれるが如く、綺麗に話が進む。
その上で『教科書に載っていることを護るだけでなく、こうやって応用するんですよ』と、きっちりと最後にオチを持ってくる。
読んでいて漫画『はじめの一歩』のブライアン戦の鷹村が脳裏に浮かびました。
鷹村は一見すれば豪放磊落で破天荒なパワーファイターなんだけど、実際は、基本に忠実で基礎的なパンチが得意。本作の第一話は、そういう作品でした。
僕は『小説を書く勉強のために』という視点もいれて小説を読んでいるだけど、本作からは『基本に忠実なパンチがいちばん強い』と教えられました。
二話目の「こうなるんだろうな」という想像を上手くコントロールされた感も凄い。
最後の一行が『それは嘘だろ』とツッコミを誘ってくる。
何処にも、主人公(ヒロイン)がそうした理由を嘘だと書かれていないから、読者は『嘘だろ』というツッコミで一歩登場人物に近づくことになり没入感が強くなる。そして、没入感が強いところで物語が終わっているので、何とも言えない読後感を味わえる。
このテクニック、盗みたい。
グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む (電撃文庫)
「昨今の冒頭の一発ネタだけで最後まで書く」ような、似たような読み応えばかりの作品とは異なる。
物語や設定をじっくり楽しみたい人向けの作品。
『全ページほぼ図書館の中』という時点で、本作の世界が特異であることが分かる。
特異な世界で、個性あるキャラクターが何をなしていくのか、興味深く読むことができた。
図書館とダンジョン探索RPGという相性のよい素材を上手に調理していた。
様々な本の能力を引きだすというのも、わくわくできる。
これ、ゲームにしたら面白いやつ。
ヒロインは何人か出てくるけど、青色のパンツを穿いている子が一番可愛かった。
ポジション的に不遇扱いされそうなのが不憫。
読み終えてみれば「挑戦した作品」だなあという印象が強い。
というのも「終盤や続刊で盛り上げること前提」にして、序盤をやや犠牲にしている。
登場人物の多さが「終盤や続刊で意味が出てくる」という認識を、作者と編集者で共有できたのは素晴らしいことだし、それを実行した挑戦魂が凄い。
はっきり言ってしまえば、序盤から「同年代の学生」というイメージで統一されたキャラクターが大量に出てくるので、覚えづらい。
誰が重要キャラなのかも分からない。重要そうに出てくる幼馴染みは、挿し絵にはなっても、表紙には載っていない。逆に単なるモブっぽい者が主人公の仲間になって、活躍する。
そのため、「小説を読むときの、キャラ名を覚える脳内一時メモリ」をどのキャラに割けばいいのか分からずに、序盤で戸惑うこがもあった。
筆者や編集者も分かった上で作っているはずなので、相当、続刊も含めてのシリーズに自信があることが窺える。
実際、登場人物は「能力の性質上、一系統(一定の法則がある)しか使えない」ため「仲間との組み合わせで戦う必要がある」ので、登場人物の多さは後々に生きてくる。
本(能力)の設定は増えれば増えるほど面白くなるし、探索と言うこともあり、続けば続くほど面白くなる作品です。
◆朗読動画
朗読動画があるので、先ずはお試しで見てみましょう。
◆その他
序盤の登場人物の数やイメージコントールは同作者の『昔勇者で今は骨』が実に上手い。
小説の冒頭で、ここまで鮮やかに「過去の出来事」を書いた作品は、そうそうない。
『昔勇者で今は骨』は作品の性質上「冒頭に出てくる主人公以外の登場人物は、一巻では重要ではない」ことが明らか。さらに、職業が異なるから、名前を覚えられなくても絵面をイメージしやすい。